梅毒
梅毒は梅毒トレポネーマというバイ菌による性感染症です。感染した時の皮膚のブツブツが山桃(楊梅)に似ているため梅毒という名前がついており、歴史は古く1400年代からある病気です。しかしただの昔の病気、というわけではなく最近は10〜20代を中心に感染が増えております。特に自覚症状がでない人もいるので梅毒を気が付かないうちにもらっていた、ということもよく見かけます。また、梅毒は色々な症状を引き起こすためわかりにくいこともあります。当院で早めに相談しましょう。
原因
原因菌は梅毒トレポネーマです。感染経路は感染部位と粘膜や皮膚の直接の接触です。具体的には性行為にて皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入することによって感染します。1回の性行為での感染率は約30%と報告されています。具体的には性器と性器、性器と肛門、性器と口の接触で感染します。その後数時間で血を巡って全身に広がり、さまざまな体の症状を引き起こす病気です。潜伏期間は平均3週間(3〜90日とばらつきがあります)になります。赤ちゃんの時にお母さんの体の中で胎盤から感染することもあり、その場合には先天梅毒と呼ばれます。梅毒の厄介なところは感染しているのに無症状だったり、症状が軽くて病気であることを自覚していない人から感染する可能性があることです。
症状
梅毒は最初の段階では非常に診断が難しいことがあり、The great imitator(偽装の達人)として有名な病気です。慣れた医者でも診断ができないことがあり、血液検査をしないと症状だけではわからないことがあります。梅毒は感染してからの時間によって症状が変わっていきます。具体的には1〜4期に分類されています。
第1期(感染3週間後〜)
感染した場所(ペニス、陰部など)に小さなコリコリとしたしこりができます。これを初期硬結といい、数は大体1つが多いですが複数できることもあります。その後しこりが硬くなり、中心に潰瘍、キズができます(硬性下疳)。特に痛みやかゆみはありません。さらに進行すると近くのリンパが腫れます(両側のまたの付け根であることが多いです)。特に治療をしなくてもこれらの症状は2、3週間でなくなり無症状になります。しかしこの時にも他人に感染する力はあります。感染して4週間経つと検査で引っかかるようになりますのでこの時期から検査はすることができます。
第2期(感染3カ月〜3年)
全身に皮膚や臓器の症状の症状が出るようになります。最初に出るものとしては皮膚の湿疹は手のひらや足の裏、全身にうっすらとやや盛り上がった赤い湿疹が出ます(梅毒性バラ疹)。自然と数週間で消えることもありますが梅毒が良くなったわけではありません。小さな豆粒ほどサイズの赤褐色の湿疹がお体や手足に出現します(丘疹性梅毒)。他にも口や陰部、脱毛を認めたりと多彩な皮膚症状を示します。その後も自然に良くなったり再発したりを繰り返します。アレルギーや風疹、麻疹などに間違うこともあり、かなり診断が見た目では難しいこともあります。また、梅毒が眼に来ることもあるので眼科にも診察をしてもらう必要があります。
第3期(感染後3年〜)
近年では第3期まで進行する前に見つかることがほとんどです。感染してから数年経つとゴムのような腫瘍が皮膚や体、筋肉、骨などにできます。鼻にできると鼻がとれることもあります。第3期以降になると他の人に感染することはありません。
第4期
ここまで進行すると全身の臓器に病変ができ、血管や脳に影響がでて死亡することもあります。
検査
梅毒の検査は血液の検査で行います。感染してから4週間以上経っていれば検査で調べることができます。検査結果は数日ほどで出ます。ただ初期感染や微妙な陽性結果となることがあり、検査結果の判断が難しいこともあります。
治療法
飲み薬の抗生物質で治療を行います。しっかりと1日3回、処方された薬を飲んでいれば治ります。治療期間は第1期で2〜4週間、第2期で4〜8週間治療を行います。ちゃんと完治しているかを定期的に1ヶ月おきなどで血液検査で調べる必要があるため治療開始前や治療後もその後も定期的に通院を継続します。また、治療開始数時間ほどで梅毒トレポネーマが破壊されるため高熱、全身のだるさ、寒気、頭痛、筋肉痛、発疹が出ます。これは薬の副作用ではなく梅毒の抗生物質への反応です。妊婦の方はそもそも梅毒に感染すると胎盤を通して胎児に感染して死産や奇形ができることがあるのですが、薬物治療によるこの反応によって流産や早産になることがあるので注意が必要です。時に無症状のまま進行することがあるため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめないようにしましょう。
残念ながら自然治癒は期待できません。放っておくとどんどん梅毒が進行するため相談するようにしましょう。
パートナーについて
パートナーは必ず血液検査を受けるように説明をしましょう。一定時間検査で出ないこともあるので時間をおいて定期的に確認する必要があります。また、感染すると体の中に抗体ができますが、一生で一度しかならない病気というわけではなく繰り返し感染を引き起こします。そのためパートナーを治療しないと自分が再感染します。性感染症予防のためにはコンドームを使用することを推奨しますが、コンドームで覆われない皮膚でも感染症を起こすことがありますので何か症状があれば早めに受診をしましょう。
以上になります。今あるブツブツが梅毒なのかも、、、ととても不安だと思います。当院でお早めにご相談ください。